ビジネスのすべての課題は「現場」にある
現場起点で描き直した中期経営計画の“現在地”
2025.12.26
脆く(Brittle)、不安で(Anxious)、直線的ではなく非線形性(Non-Linear)、不可解である(Incomprehensible)──。「BANI」という言葉であらわされる不安定な時代にあってビジネスに求められるのは、変化に即応し、柔軟かつ迅速に戦略を変え、挑戦し続けるリーダーシップではないだろうか。2023年に策定した中期経営計画をわずか半年でつくり直して、25年に新たな中計のもとで再出発したデジタルエンジニアリング企業、AKKODiSコンサルティング。その勇気あるチャレンジは何をもたらしたのか。代表取締役社長・川崎健一郎が語る。
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わずか半年で中期経営計画をつくり変えた理由とは
──2025年は新しい中期経営計画の初年度でした。23年に一度着手した中計をあらためてつくり直したそうですね。
川崎健一郎(以下、川崎):AKKODiSコンサルティングは、Adecco Groupでテクノロジーソリューション事業を展開するModisとグローバルにエンジニアリングサービスを展開していたAKKA Technologiesという2つの会社を事業統合して23年に新たに誕生したデジタルエンジニアリングのグローバル企業です。日本市場に事業を展開する私たちは、AKKODiSとしての最初の中期経営計画で、「日本を、課題解決先進国に。」「失われた30年を5年で取り戻す。」という壮大かつ野心的なビジョンを掲げました。
非常に前向きなビジョンではありましたが、今から見れば見通しが広すぎたように思います。ビジョンが壮大すぎて、それを達成するために何をすればいいか分からない。それが社員たちの率直な声でした。結果、現場の士気が大きく下がってしまいました。
社員のモチベーションが下がり、ビジネスのパフォーマンスも目に見えて落ちていきました。その状況が明らかになり半年がたった時点で、思い切って会社の体制と中計を見直すことにしました。このまま続けてもリカバリーは難しいと判断したからです。
──前中計の一番の問題点はどのような点にあったのでしょうか。
川崎:現場の声が反映されていなかったこと。それゆえに具体性を欠いたビジョンになっていたこと。その2つです。
会社を動かしていくのは、現場の社員です。経営者がどれだけ大きなゴールを掲げても、社員一人ひとりが納得して動けなければ、ビジネスは前に進みません。しかし、前中計には社員たちの視点や思いが十分に反映されていませんでした。
そこで新たな中計は、現場のチームリーダーやマネージャーにも参加してもらい、社員の声を丁寧に拾いながら作成していくことにしたわけです。完成まで8カ月という時間がかかりましたが、全社員が前向きに取り組める明確で具体的なビジョンをつくることができたと思います。
3つの具体的課題を踏まえて策定した新ビジョン
──新しい中計ではどのようなことを目指しているのですか。
川崎:私たちはまず、日本という国、および日本企業の大きな課題は3つあると考えました。人口減少による働き手の不足、脱炭素社会の実現、そして国内市場の縮小です。
1つ目の働き手の不足という課題を解決する最も有力な方法は、生産性の向上です。そこで私たちは、AIなどの最新テクノロジーを上手に使いながら、労働生産性を飛躍的に高める取り組みを支援することを目標に掲げました。
生産性が向上することによって、人手不足が解消するだけでなく、既存事業に余力が生まれることになります。その余力をもって新しい事業領域を開拓していくこと。そこまでを視野に入れた支援をしたいと私たちは考えています。
──いわゆる「両利きの経営」ですね。
川崎:そのとおりです。既存の事業領域を進化させながら、同時に次の新しい領域を探索していくということです。それが企業の持続可能性につながります。
2つ目の課題である脱炭素社会の実現は、日本社会や企業の課題であるばかりでなく、人類全体が目指すべき目標です。テクノロジー人財を提供していく会社である私たちは、脱炭素を実現するクリーンテックの領域に貢献していく使命があります。しかし現在のところ、その領域で活躍しているテクノロジー人財は、社員の3%程度にとどまっています。これを2030年までに20%まで引き上げること。それも新しい中計の目標の一つです。
3つ目の国内市場の縮小も、1つ目と同様、人口減少に必然的に伴う課題です。どれだけ素晴らしい商品やサービスを開発しても、消費者の数が減っていく市場だけで勝負している限りは、大きな事業成長は期待できません。
一方で世界に目を向けて見れば、人口は80億人を超えており、今後もしばらくは伸び続けていく見込みです。そう考えるならば、日本企業がどちらで戦うべきかは明確です。優れた製品やサービスを世界に届けて、事業をグローバルな舞台でスケールさせていくこと。それがこれからの日本企業が目指すべき方向性であり、それを私たちは力強く後押ししていきたいと考えています。
では、なぜ私たちにそれができるのか。私たちは、世界60の国と地域に拠点を持つAdecco Groupであり、世界30カ国でデジタルエンジニアリングのソリューションサービス展開をしているAkkodisの一員であるからです。そのグローバルアセットをもって、日本企業の世界での成功を支援していくこと。それが3つ目の目標です。
──大変具体的な目標設定ですね。
川崎:前中計の反省を踏まえて私たちが目指したのが、まさに具体的にイメージできる課題とその解決法を明らかにすることでした。それらの課題と目標設定に基づいて掲げた大きなビジョンが、「日本企業を、世界企業へ、現場変革から。」です。
「FUSION(フュージョン)」から生まれる現場変革
──「現場変革から」という文言の意味をご説明いただけますか。
川崎:先ほども触れたように、日々ビジネスを動かしているのは、経営者ではなく、最前線で働く現場の社員です。テックコンサルタントの専門性や技術力をクライアント企業の外部リソースの一つとして提供しビジネスを支援するのが、AKKODiSコンサルティングの主要なビジネスモデルです。私たちは統合前のModis、さらにその前身に当たるエンジニア人財サービスを展開していたVSNの時代から、単に言われたこと、依頼されたことだけを行うのではなく、現場の視点を大切にしながら根本的な事業課題の発見と解決を通じて、クライアント企業の事業改革に貢献していくことを何よりも大切にしてきました。
そのサービスモデルを私たちは「バリューチェーン・イノベーター(VI)」と呼んでいました。クライアント企業のバリューチェーンの課題を現場で発見し、それを改善していくお手伝いをするということです。
しかし前中計では、そのVIの活動をいったん棚上げする状況になってしまいました。AKKODiSの社員は、「どうしてVIの活動をやらないのか」「改善の提案をしてもらえないのか」とお客様から何度も言われたそうです。いったんVIをやめてみて、10年以上にわたって続けてきたその活動の重要性に私たちはあらためて気づかされることになりました。
クライアント企業の現場に寄り添うVIは、やはり私たちのサービスの中核と考えるべきだ。では、それをそのまま復活させればいいのか。いや、新しい中計の戦略に沿った形で、VIのコンセプトも新しくすべきだ──。そんな白熱した議論を繰り返す中で浮上してきたキーワードが「FUSION(フュージョン)」です。
──「融合」という意味ですね。
川崎:外部人財としてクライアントに「伴走」するのではなく、クライアントに「同質化」してしまうのでもない。クライアントと私たちがそれぞれに保有するアセットや専門性をまさに現場で「融合」させることによって、新しい価値を生み出していく──。そのサービスを、私たちは「Fusion Activators(フュージョン・アクティベーターズ)」と呼んでいます。
Fusion Activatorsとは、いわば進化したVIです。このコンセプトは社員にも納得して受け入れてもらえました。現在、AKKODiSに在籍する6000名のテックコンサルタント社員のうち、すでにおよそ2800名がFusion Activatorsの活動に参加しています。この数は、これからどんどん増えていくと思います。
継続的な改善で、社員とビジネスはどこまで成長できるのか
──中計の再スタートの年となった25年の活動をどう評価していますか。
川崎:大きな手ごたえを感じています。何より社員のモチベーションが上がったことがうれしいですね。その変化は離職率の低下と、定期的に調査している社員エンゲージメントスコアの向上にはっきり表れています。
一方で課題もあります。一番の課題は採用です。新しい中計を推進していくに当たって必要とされるのが、新しい仲間たちです。しかし、単に増員すればいいというわけではありません。私たちがこだわっているのはビジョンマッチング、つまりAKKODiSが掲げるビジョンや理念に共感してもらえる人たちとともに働くということです。単に条件に基づいた採用ではないので、従来とは異なる採用体制が必要になります。その体制づくりに時間を要したために、採用数が当初の目標に達しませんでした。
とはいえ、AKKODiSのビジョンをともに進めていこうという意欲のある人たちの数は着実に増えています。その新しい仲間の力によって、26年度以降はビジネスをどんどん前に進めていけると確信しています。
25年度のビジネス成長は採用体制の再構築もあり、目標には届きませんでしたが堅実な成長を果たし、利益は目標を上回る順調な推移を示しています。26年度以降に向けた土台や仕組みはしっかりつくれたと考えています。
──26年度の新たなチャレンジについてもお聞かせください。
川崎:Fusion Activatorsの仕組みで私たちが非常に重視しているのが、クライアントからのフィードバックです。定量的スコアで私たちの活動を評価していただくだけでなく、定性的なコメントもいただきます。
25年度にも、さまざまなフィードバックをいただきました。大変うれしかったのは、最も評価が高かった項目が「課題の設定力」だったことです。コンサルティングサービスにおいてまさに重要なのは、課題に順位をつけることです。山のようにある課題の中で、最も本質的な課題を見極める力。当社の中計を策定する際に課題を特定したように、その課題設定力を評価いただいたことは、大きな励みとなりました。
26年度からは、こういったアンケートに加えて、クライアントとともに推進したFusion Activatorsの事例を紹介していきたいと考えています。その第一弾として、私たちの大切なお客様であるNTTドコモビジネス様のご担当者へのインタビューを実施させていただきました。今後、Fusion Activatorsの事例を継続的に積み重ね、より多様な視点を紹介していく予定です。
私たちのサービスのいい面も悪い面もすべて赤裸々に語っていただくことによって、サービスを改善し、クライアントにより貢献できる体制をつくっていくこと。それを26年の大きな目標の一つにしていきたいと考えています。
AKKODiSコンサルティング株式会社
代表取締役社長
川 崎 健 一 郎
1976年生まれ。99年に株式会社ベンチャーセーフネット(現、AKKODiSコンサルティング株式会社)に新卒入社。2010年代表取締役社長に就任。Akkodis APACのRegional Head、アデコ株式会社の代表取締役会長を兼任。
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