東京―大阪をIOWN®でつなぐ 「IOWN FUSION EXPERIENCE 2026」イベントレポート

2026.10.19

前回は、IOWN®※1を「知る」段階から「活用する」段階へ進めるために、AKKODiSが開発を進めてきたAPN研修とIOWNユースケース創出ワークショップについてご紹介しました。今回は、この2つのプログラムの提供開始発表を兼ねた、次世代共創体験イベント「IOWN FUSION EXPERIENCE 2026」の様子をレポートします。メインプログラムは、IOWNの技術を活用した「ふれあう伝話」のデモンストレーション。東京―大阪間の約600kmをつなぎ、音声や映像だけでなく、触覚や振動を相互に送り合う、リアルタイムな次世代コミュニケーション体験を提供しました。
※1 Innovative Optical and Wireless Networkの略で、NTT株式会社の商標または登録商標。以下、IOWN

東京―大阪をIOWN<sup>®</sup>でつなぐ

共感・共創を生み出す共創体験イベントを開催

本イベントは2026年9月18日、AKKODiSコンサルティング株式会社(以下、AKKODiS)とNTTグループ(共催:NTT西日本株式会社、NTT株式会社、協力:NTTドコモビジネス株式会社)が、IOWNの理解促進と社会実装に向けて共同開催したものです。東京と大阪の2会場をIOWNの中核技術であるAll-Photonics Network(以下、APN)で接続しました。

また、本イベントはEXPO 2025大阪・関西万博のレガシーを活用して開催される「Global Startup EXPO 2026」※2の公式サイドイベントとしても位置付けられています。

東京会場は、AKKODiS東京本社内にある共創施設「AKKODiS IOWN FUSION BASE」、大阪会場は、NTT西日本の大阪本社内にあるオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」。両会場を合わせて35社、約70名にご参加いただきました。

※2 大阪・関西万博で披露された未来技術の社会実装、ディープテック分野を中心とした国際的なスタートアップイベント

 

最新技術によりAKKODiS IOWN FUSION BASEをアップグレード

イベントの冒頭では、AKKODiS代表取締役社長の川崎健一郎が開会のあいさつを行い、「AKKODiS IOWN FUSION BASE」がオープンで実践的な共創拠点へと進化したことを紹介しました。

「NTTさま、NTT東日本さま、IOWN GLOBAL FORUM™(以下、IOWN Global Forum)さま、1Finityさま、NECさまのお力添えにより、よりオープンで実践的な共創拠点としてアップグレードすることができました。さまざまな最新テクノロジーを実際に体験していただくことで、IOWNへの理解をより一層深めていただけると確信しています」

<IOWN APNによる低遅延・大容量通信技術を体感>

  • PEC-2モック展示(NTT)
  • APN遅延体験(NEC WXシリーズ + NTT東日本 OTN Anywhere model-B)
  • APN無瞬断体験(1Finity T250)
  • APNジオラマ展示(IECTF, IOWN Global Forum)

 

IOWNの社会実装を推進する人財育成プログラム

イベント当日は、「All-Photonics Network研修(以下、APN研修)」と「IOWNユースケース創出ワークショップ」の提供開始も発表されました。

「これまで提供してきた『IOWN構想基礎研修』は、すでに約4,000名を超える方が受講されています。次の段階としてIOWNの技術的な要素をより専門的に学ぶ『APN研修』をリリースしました。さらに、単にインフラを整えるだけではなく、IOWNを活用してどのようなサービスや価値を生み出せるのかといった議論が今後は重要になってきます。そこで『IOWNユースケース創出ワークショップ』の提供も開始しました。この2つの人財育成プログラムを通じて、IOWNを『知る』段階から『活用する』段階へと進め、新たな事業や社会実装につなげられる人財を世界中に輩出することを目指しています」

<IOWNの社会実装を加速するAKKODiSの人財育成>

IOWN構想基礎研修
IOWNが必要とされる社会的背景や技術概要・ビジネス活用を体系的に学ぶ入門研修。2025年4月、NTTドコモビジネス監修のもと、最新の技術情報を盛り込み、より現場に即した実践的な内容に刷新。技術職以外のビジネスパーソンにも幅広く活用できる内容です。

APN研修
IOWNの中核技術であるAPNに焦点を当て、光通信技術の基礎からAPNの仕組み・構成要素、Open APNの将来像までを体系的に学び、その価値について技術的根拠をもって説明・提案できる人財を育成するプログラムです。

IOWNユースケース創出ワークショップ
IOWNの基礎理解をもとに、カードを活用した多角的なディスカッションを通じて、ビジネスや社会課題の解決につながるユースケース創出力と共創力を育成する実践型プログラム。導入研修からアイデア発想、ニーズ起点での再発散までを段階的に行い、IOWNの価値を生かしたユースケースを創出します。

川崎は、あいさつの最後に、未来に向けた強い決意を表明しました。

「人類がサステナブルな社会をつくり上げるためにIOWNという基盤は欠かせません。異業種の皆さまが『AKKODiS IOWN FUSION BASE』に集い、人と人、さらには人と事業や技術同士がフュージョン(融合)することで、新たな価値が生まれることを期待しています。AKKODiSの役割は、人財育成、ユースケースの創出、そしてわれわれが持っているグローバルアセットを最大限活用したグローバル展開です。この3つの柱を中心に、IOWNの社会実装に向けて、引き続き全力で取り組んでまいります」

 

オープンイノベーションからソブリンイノベーションへ

NTT株式会社 川添雄彦氏

 

続いて、IOWN Global ForumのPresident and Chairpersonを務めるNTT株式会社の川添雄彦チーフエグゼクティブフェローが登壇しました。AI開発の課題やIOWNの特徴、産業界で進むユースケース創出などについて語りました。

「昨今、AI技術の急速な進歩が世界に危険を及ぼす可能性を高めているとして、主要AIリーダーらがAI開発のスピードに対する懸念を訴えています。これまでのAI開発は、とにかく数を集めてみんなで利用するオープンイノベーションによって発展してきました。この場合、データの主権は自分たちから離れてしまいます。中には、先端技術や国家機密など、外部と共有できないものもあります。そこで必要となってくるのが、国や企業、チーム内など、クローズドな環境下で発展させていく、いわゆるソブリンイノベーションです。ただし、現在のインターネットにはデータセキュリティや処理能力の限界といった課題もあります。生成AIの学習には膨大なエネルギーが必要で、結果的にCO2を地球上に大量に排出してしまっています。その上、生成AIの普及によりインターネット上のトラフィック量が爆発的に増加すると、消費電力が拡大するだけでなく、データの処理が追いつかず、通信の遅延が起きてしまいます。これらの問題を解決するのが、大容量・低遅延・低消費電力の通信を実現するIOWNです。われわれは光ベースの技術を使うことで、情報通信の未来を根本から変えようとしています」

 

IOWN Global Forumにおけるユースケース創出

こうした課題認識のもと、IOWN構想の実現に向けて活動しているのがIOWN Global Forumです。IOWN Global Forumは、2020年にNTT、インテル、ソニーの3社で設立され、現在は世界中から170超(2026年9月時点)の企業・団体が加盟しています。

「当初、IOWN Global ForumのメンバーはICT分野の方々が中心でしたが、近年は実に幅広い産業の方々が関心を示してくださっており、IOWNが生かされる領域はまだたくさんあるように感じています。ユースケースの一つに鉱山産業があります。鉱山採掘の現場では、坑内での人身事故を避けるため、フィジカルAIを搭載したロボットを活用するなど、無人化の動きが急速に進んでいます。そのため、IOWNのような超大容量・超低遅延のインフラの活用が強く期待されています。このようにIOWN Global Forumでは、単にIOWNの技術をディスカッションするだけでなく、多様な分野におけるさまざまなユースケースを検討しています。この2つを同時に行っていることに大きな意味があると感じています」

 

人を起点に生まれるクローズドな情報の価値

大量のAI生成コンテンツやデータがあふれる現代では、情報のオープン化が進むほど、人を起点にしたクローズドな情報に高い価値が生まれています。

「AIをフロンティアモデルとして巨大化していくことの危険性を考えたとき、すべてのデータをAIに引き渡すのではなく、時として人間の中にためていくことも重要です。AIを理解し、使いこなすことにも増して重要なのは、どの情報はオープンにして、どの情報は手元に囲い込んでおくべきかを理解しておくことではないでしょうか。インターネットに公開してしまうと、いろんなデータと混じり合ってしまい、情報の純度は下がってしまう。しかし、限定された場所や人に囲い込むことで、情報の純度は高まる。純度を上げていくという視点でいけば、まさに人財をベースにしたAKKODiSさんの取り組みには大きな価値があると感じています」

また川添さまからは、本イベントに寄せて次のメッセージが届いています。

日本には昔から「門外不出の秘伝のタレ」という考え方があります。すべてをマニュアルにして公開するのではなく、本当に大切なものは人から人へ伝える。私は、AI時代にはこの考え方がもう一度重要になると思っています。

(中略)

つなぐものと、分けるもの。共有するものと、守るもの。AIに渡すものと、人間に残すもの。これらを同時に実現するネットワークが必要です。

(中略)

AIのために人間社会をネットワークにつなぐのではない。人間社会を守り、進化させるためにAIをつなぐ。私は、そこにIOWNとそれを支えるアコーディスの大きな意味があると思っています。

 

東京と大阪をIOWNの中核技術であるAPNで接続し、
「ふれあう伝話」による次世代コミュニケーションを体感

「ふれあう伝話」のデモンストレーションの様子

 

続いて、イベントのメインプログラムとして、IOWNの技術が支える「ふれあう伝話」のデモンストレーションを実施しました。「ふれあう伝話」は、EXPO 2025大阪・関西万博のNTTパビリオンでも展示された次世代コミュニケーションツールです。東京と大阪をAPNでつなぎ、音声や映像だけでなく、触覚や振動もほぼ同じタイミングで届けることで、遠く離れた場所にいても同じ空間を共有しているようなリアルなコミュニケーションを披露しました。

「ふれあう伝話」のモニター前に置かれた台の上でリズムを刻むと、ほぼ遅延なく相手に触覚が伝わり、紙相撲やキャップ倒しなどの実演では「今、つながっている」という感覚を直感的に伝えられました。また、聴診器で測った心拍を振動として送る場面では、未来の遠隔医療の可能性を感じさせました。

デモンストレーション終了後は、両会場の参加者同士で、「ふれあう伝話」を体験していただきました。参加者からは、「相手と離れているのに距離感を感じない」「新しい顧客体験創出につながる可能性を感じた」といった驚きの声が寄せられました。

 

最後に、AKKODiS取締役 兼 Chief Operating Officerの伊佐俊紀が閉会のあいさつに立ち、イベントを締めくくりました。

「今回のイベントを通じて、IOWNがすでに構想や検証という段階を終え、実社会への導入に向けた新たなフェーズに進んでいることを強く実感しました。今後も、AKKODiSは『人財育成』を重要な柱として、IOWNの社会実装に貢献できるよう、取り組みをさらに加速してまいります」

イベント終了後、東京会場では、新たに設置したデモンストレーションやプレゼンテーションに多くの方々が集まりました。大阪会場では「IOWNユースケース創出ワークショップ」が行われ、積極的な議論が交わされました。

大阪会場で行われたIOWNユースケース創出ワークショップの様子

 

今回のイベントを通じて、次世代コミュニケーション技術の可能性に、多くの方から強い関心が寄せられていることを、肌で感じとることができました。新たなつながりが生まれ、有意義な対話と共創の機会が育まれたことは、私たちにとって大きな刺激と喜びになりました。このイベントを成功に導いてくださった皆さまに、改めて感謝申し上げます。

次回は、IOWN推進室長の森本直彦へのインタビューを通じて、実社会への導入段階へと進むIOWNの今後の展望と、AKKODiSが果たしていく役割についてお届けします。

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